「烏梅(うばい)」の歴史とその作り方

季節は秋になりましたが、まだまだ暑い日が多いですね。これからは朝晩の温度差も大きくなります。体調管理も大事になりますので注意して過ごしていきましょう。
体調を整えるには、栄養のある食事が大事ですね。梅はビタミン、クエン酸が豊富に含まれており、疲労回復効果や胃腸を整えたり、血圧の上昇を抑えたりする効果もあります。梅は古くは薬として用いられた時期もありました。中国では漢方薬の「烏梅(うばい)」として使われており、日本にも伝わったとされています。
そこで今回は「烏梅(うばい)」の歴史とその作り方についてまとめたいと思います。

梅の原産地は中国です。長江中流や湖北省の山岳地方などが原産で、中国では漢方薬として活用されていました。これが「烏梅(うばい)」です。中国で作られていた烏梅(うばい)は熟していない青梅の実を燻製にして作られていました。この烏梅(うばい)を日本に持ってきたのが遣唐使たちです。中国の漢方薬として持ち込まれて、熱冷ましや解毒、下痢止めや擦り傷や切り傷の手当てなどに利用されました。お湯を入れて飲むと汗を流すので熱を冷ましてくれたようです。さらには日本では紅花染めや化粧用の口紅の媒染剤としても烏梅を使っています。
この烏梅が今でも残っているのが奈良県の月ヶ瀬地区です。鎌倉時代の末期に月ヶ瀬地区に烏梅の作り方が伝わりました。1331年の元弘の乱の際、後醍醐天皇が京都の南の笠置から落ち延び、その際に世話をしたお礼として烏梅の製法を伝えたとされています。
月ヶ瀬で作られるようになった烏梅は次第に京都の染物屋に卸されるようになりました。当時は同じ重量の米よりも高価で取引されたため、月ヶ瀬地域の重要な収入源となりました。この頃から月ヶ瀬の渓谷に梅の花が植えられるようになり、今でも春には梅の花が咲き誇る美しい風景を見ることができます。
この月ヶ瀬における烏梅の製造方法は、中国での作り方と少し異なります。月ヶ瀬では青梅の代わりに完熟した梅を用います。また梅の実には煤(すす)をまぶして土窯に入れて蒸し焼きにするのも元来の中国での作り方との違いです。
烏梅はその名の通り、カラスのように真っ黒な色をしており、しわのある見た目も特徴的です。ちなみに烏梅は中国では「wu mei」と発音されます。この音をまねて日本では梅の木を「ウメ」と呼ばれるようになったとする説もあるそうです。
この烏梅が今の梅干しのルーツになったとされています。今の梅干しとは作り方や用法も異なりますが、当時の烏梅のことも思い出して梅干しを食べると、いつもよりも趣のある味に感じるかもしれないですね。